自分の生活の中で、色々な自分が登場する。
生意気だったり、冷たく他人をあしらったり、態度がでかかったり、はたまた、弱気になったり、ネガティブ思考になったりする。
熱くなることもあれば、冷めていることもある。
そういうなかで、ふと
「本当は自分は"どれ"なのだろうか?」
「本当の自分とは、何か?」
こういう問いを抱くことがある。
特に、人と楽しく穏やかに優しく接していた自分の姿と、
それと対比するように、別の場面での、他人をひどく叱責したりする自分の姿を思い出したりすると、「僕は穏やかな面もあるかもしれないけれど、本当は他人の気持ちなんてどうでもいい、冷たい人間なんだな」
と思ったりして、晴れない、澱んだ気分になって、嫌になることがたまにある。
もちろん毎日そんなことを考えているわけではないが、たまに、そういうことを考えたりすることが実際ある。
誰だって考えたことがあるかもしれない。
そういった澱んだ気持ちを整理して軽くしてくれたのが『分人主義』という考え方であり
平野啓一郎氏の『私とは何か 「個人」から「分人」へ』という本だった。
平野 啓一郎
講談社
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分けることのできない「個人(individual)」
ではなく
分けることのできる「分人(dividual)」の集合体
という捉え方で見つめてみること提案している。
表面的な、仮面をかぶった、演じている自分と、その内側に存在する本当の自分、という捉え方ではなく、
対人関係ごとの、その人との間の関係によって生じる様々な自分を「分人」とし、
それらの「分人」によって構成されている集合体として、自分をとらえる考え方である。
内側も外側もない。あらゆる姿は全て自分である。
この本では、自分とは何か、自分と他人との関係、他人を愛すること、自分を愛すること、などが、この「分人」という概念に基づいて捉え直される。
とても見通しが良く、読んでいて、いろいろ悩んでいることがすっきりした。
簡潔に言うと、読む前よりも生きやすくなった気がする。
解説記事ではないので、このくらいしか書くつもりがないが、興味があれば、まえがきだけでも読んでみるとよいかもしれない。
平野氏は小説家であり、もともとこの「分人主義」呼ばれる考え方は彼の小説『ドーン』の中で展開されたものである。
有人火星探査とアメリカ大統領選という2つの事件が絡みあうスリリングな展開と、その中でそれぞれの登場人物がそれぞれの「分人」をどう生きるかというテーマが合わさって、非常に面白かった。
合わせて読むのも面白いかもしれない。
平野 啓一郎
講談社 (2012-05-15)
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