先日、牛久大仏を見に行ってきた。
牛久大仏というのは、茨城県牛久市にある高さ120mの巨大な大仏であり、世界最大のブロンズ立像でもある。
この牛久大仏、内部に入ることができ、中央を貫くエレベーターで高さ80mまで登れば、ちょうど胸や腕あたりのスリットから周囲を展望することができる。広々として景色が広がっており、天気が良かったので目を凝らして東京スカイツリーを見ることさえできた。
サイズ感が伝わらないが、リアルで対面すると「常軌を逸している」という言葉が自然と湧き出る。 |
これだけ巨大なブロンズ製の大仏(もはや建物である)だと、気になるのが落雷である。
展望して分かったが、本当に周囲には何もない。
僕は、この大仏に雷が落ちる様子を想像した。
何よりルックスがヤバそうである。
大仏に落雷というのは、巨大な仏様を築き災いを鎮めようと願った古くからの大仏建立のモチベーションに真向から戦いを挑むような、強烈な迫力をもつ絵面に違いない。
そう思った僕は、「牛久大仏 落雷」で画像検索した。
ところがご覧のとおり、全然落雷の画像がない。
頭頂部とかに、ばりばりっと稲妻が走る画像が見当たらないのである。
思っていたのと違う。
ちなみに、頭の中でイメージしていたのは、東京スカイツリーの落雷のような光景である。
てか、東京スカイツリーは雷研究のための設備があり、運用されている。電力中央研究所のページはこちら。 |
こんな感じのを期待していたんだけどなあ。
ちなみに、同じ宗教的な巨大像として有名なリオデジャネイロにあるキリスト像は、
バリバリでいらっしゃった。
ちなみに、このような落雷により、キリスト像の指が損傷するなどしているようだ。
こんな感じで牛久大仏に雷は落ちないのだろうか?周囲に高い建物もなく広々とした土地に、ポツンと高さ120mのブロンズ像があるのだ。
我々は、たまたま落雷の様子をとらえられていないだけなのだろうか?
牛久大仏の結界 -落雷抑制システム-
実は、画像検索じゃなくて普通に検索したらすぐに分かることなのだが、牛久大仏には「PDCE避雷針」という避雷針がついているそうだ。
「いや、避雷針って、わざわざそこに雷が落ちるようにしてるんじゃないの?」
その通り。通常の避雷針は、そうだ。
しかし、牛久大仏に設置された「PDCE避雷針」というものは、そうではないらしい。
この避雷針を設置した「株式会社 ミライト」さんの「PDCE避雷針」に関するページはこちら。
どうも、この避雷針は設置することによって落雷そのものを回避するらしい。原理を書くと長くなるので書かないが、避雷針の先が負に帯電してるせいで雷が落ちない的なアレだそうだ。文字通り「避雷針」である。ちなみに「PDCE」って何の略かと思って調べてみると、スペイン語の「Pararrayos Desionizador Carge Electrostatica」の略だそうで、google翻訳によるとpararrayos=避雷針, desionizador =de-ionizer(脱イオン的な感じ?), carge=charge, electrostatica=electrostatic 的な感じらしく、そちらの方の国の開発した製品のようだ。Pで避雷針という単語が入っているので、「PDCE避雷針」はやりすぎだ。
さらに、さきほどのウェブページには、このシステムによって落雷から保護される領域についても書かれている。それによると、高さ1の建物の先端にこの避雷針が設置されているとき、その地点を中心とした半径5の円内への落雷は抑えられるという。ただし、この避雷針によって保護される有効範囲は半径およそ100mが限界であるとの記載もある。
高さを上げても守られる半径は最大で100mだそうだ。
従ってこれによると、高さ120mの牛久大仏によって120m×5=600mの半径の円内が保護されるわけではなく、半径およそ100mの円内が保護されるということか。
それにしても、大仏によって周囲への落雷が抑えられているので、「結界」という言葉が良く似合う。(実際この話を友人にしてみたところ、彼の口から「結界」という言葉が自然に飛び出した。)
ちなみにどうでもいいが、牛久大仏設置により半径100mの結界が張られるとするならば、牛久大仏をお互いに100√3の距離を空けて三角格子状に配置すれば、広い平面を充填してカバーできる結界を張ることができる(あくまで算数の問題としてであるが)。
今月の日本物理学会誌に雷のメカニズムについての記事があった。放電過程にいくつかステップがあるそうで、放電開始から放電終了までに何が起きているのか、その詳細が述べられており、ドラマチックで非常に面白かった。さらに最近では、テレビにてハイスピードカメラを用いた放電過程の撮影とその映像が放送されており、学会誌を読んだ後ということもあり非常に興奮した。
雷も奥が深いのである。
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