2018年11月7日水曜日

第4回『大型書店の本棚全部見る』

 2018年10月20日。『大型書店の本棚全部見る』企画第4回目が開かれた。

前回記事
第3回『大型書店の本棚全部見る』(3)

第3回までの進捗はこちら。

7F 児童 学参 語学
6F 洋書 理工 医学
~~~~↑ここまで見た↑~~~~
5F 人文 芸術     ←イマココ 人文の途中
4F コンピュータ 社会
3F 地図 実用
2F 文庫 新書 文芸
1F 新刊・話題書 雑誌
B1F コミック

 前回あまりにも進度が悪かった我々は、気持ちを改めサクサクと棚を見ていくことを心に誓った。しかし同時に各棚の閲覧がないがしろにならないようにもしたい。両立が難しいところだ。可能な限り頭を回し、脳のクロックを上げていく。面陳をメインに見て、適宜棚差しを見る(面陳とは表紙を前面に見せるようにして陳列すること。棚差しは背表紙を向けた陳列のこと)。棚ごとに費やした時間をスマホで計測する。なんかスポーツ感がでてきたぞ。我々は、何をやっているんだ?


第4回『大型書店の本棚全部見る』レビュー


学校教育


 学校の先生が参考にするための本や、教育論、経営に関する本が充実している。小学校なんて、学問を教える以外の面が非常に強く、先生も大変なんだろうということが伝わる。ビジュアルの充実した体育の教科書もある(『運動がみるみる得意になる 体育の教科書』)。いじめについてや発達障害に関する書籍もこのあたりにある。大学の運営や方針についての本もこのコーナーだ(『大学改革という病ー学問の自由・財政基盤・競争主義から検証する』など)。今まで見てこなかったエリアだが、結構面白い。


保育


 保育コーナーは煽り文句が凄え。「最高の」「世界基準の」「IQ○○以上になる」「スタンフォード式」などの形容詞や、「~は○歳までに決まる」系。タイトルは最早ビジネス書の様相を呈しており、最高の子供に育てようという大人の願望が詰まっている。
 子育てについては個々人の環境が大きく異なるため、そもそもメソッド同士の比較は難しそう。できたとしても結論を出すのに10年単位の年月がかかるだろう。非常に曖昧だ。言い換えれば、その曖昧さに付け込んであらゆるメソッドが生まれているのかもしれない。そう思うと非常に興味深い。何も買わなかったが、今思うと一冊試しに買ったらよかった(「試しに」とは???)。


芸術


 芸術と一口に言っても、デザイン・音楽・映画・写真・絵画など。全てが、かなり身近な存在だ。
 とりわけ狭義の”芸術”とか”アート”と言われる類の興味が激しい。ここ100年くらいだけ見ても、アートスタイルは非常に多様で、現代アートの歴史をたどったりメディアアートの特集を見るだけで無限に時間がなくなる。現代アートについては、全体像を抑えられる『めくるめく現代アート』を購入。個々の作品や運動についてはそれなりに展覧会に行ったりしていて知っているものも多いが、アートの流れの中でそれらがどう位置付けられているのかが知りたいという動機。『めくるめく』が人物中心の紹介なのに対して『絵ときデザイン史』ではアートとデザインの運動やスタイル中心に分類し解説されており両方あるとより面白い。的を絞るなら、意外にも世界史コーナーにあった小冊子(例えば『ダダ:前衛芸術の誕生』)とかの方がコンパクトにまとまっていて優れていた。
 メディアアート関連では、前からチェックはしていたが本格的に情報収集をしてこなかった「ライゾマティクス」についてまとめてある本を2冊購入:『ライゾマティクス(世界のグラフィックデザイン)』『美術手帖2017年1月号』。この企画では前から実は気にはなってたけどちゃんと情報収集していないというジャンルに手を伸ばしがち。というか、そのための企画か。

 その他にも、音楽を語るもの、落語を語るもの、演劇、講談、様々なエンターテインメントに関する書籍が芸術に含まれており、見ていて飽きない。エンターテインメントだからか。


法律


 法律コーナーは馴染みが無いだけに全然わからない。法律によって社会が回っているはずなのに、法律に触れる機会が無い、というのも不思議な話だ。近い将来憲法に関しては何かしらのイベントが発生するかもしれないのでそれまでに知識をつけておきたいところである、などと思う程度である。
  そんな中、唯一入門書というか一般向けの面白そうな本を買ったので紹介しよう。『先生!バナナはおやつに含まれますか?―法や契約書の読み方がわかるようになる本―』だ。誰もが知ってる「おやつバナナ命題」を題材にして、法の解釈について説いていく斬新な本だ。この本が驚異的なのは、「バナナ」はイントロ程度の”枕にして”結局は専門的な内容を説明する、というわけではなく、ほぼ全編にわたり「バナナ」を題材にして法解釈の手続きを解説する点だ。素人の言い合いで如何にも揉めそうな点を丁寧に取り上げながら、法律屋さんの思考というものの一端を掴むことができる。

さいごに


 今回は目標通り丸1フロア分を回ることができた。良い。「1日で1フロア回る」ペースというのがどのくらいかを掴むこともできた。素晴らしい。法律関係のコーナーでは読んでも分からない書籍が多すぎて結構ペースが早まったが、全体を通して見れば遅すぎず早すぎない良いペースだったと言える。地区予選突破は間違いないだろう。

 冒頭でも書いたが、やはり面陳をメインに見ながら適当に棚差し本をかいつまんでいく形になった。面陳で並ぶ本は、基本的には新刊や話題書、一般向けの入門書、書店のプッシュ本であり、学問の色が強いヘビーな本は並ばないことが多い。短時間でテンポよく棚を見ていくためにこのあたりの閲覧の比重を調整した。これはつまり、如何に短時間で情報を収集し処理できるかという訓練とも言えよう。”短時間で”と言いつつ、ここまでで4日間かけてしまっている、というのは笑える話だ。

 驚くべきことに(驚くべきことではないのかもしれないが)、どの棚にもゴリゴリの専門書がある。専門家が研究の上に書き上げたであろう学術書だ。超入門書、入門書、専門書、研究の成果を書籍にしたやつ、みたいな感じで、深さの異なる書籍が並んでいて層が厚い。「ライトな一般書の背後にはこんなにたくさんの学術書があるんだなあ」ということを噛みしめながら見ていった。

 さて、これまで我々は、自然科学、工学、医学、洋書などあまり世間っぽさが無い、一般的でないジャンルを見てきた。あまり客の多くないフロアといってもいい。一般に書店の入り口から遠ざかるにつれて専門性は高くなるので、最上階の7階から順に攻めると最初に俗世から離れ、次第に俗世へと戻る流れとなる。
 今回ついに4階へと足を踏み入れた。学術感が薄まり、いよいよ俗世感が強まってくる。なんてったってビジネス書があるフロアだ。まだビジネス書の棚自体には到達していない。次回第5回に対面するだろう。大学で物理の研究をする俗世感の薄い僕には、逆に新鮮かもしれない。次回も楽しみだ。

それでは。
今回購入した本。
こうしてみると元々興味がある芸術系ばっかりだが、「購入した本」以外に100冊くらい「気になる本」をチェックしている。

→第5回『大型書店の本棚全部見る』(1)へ続く


0 件のコメント:

コメントを投稿