2021年1月31日日曜日

パラペットよりも高く突き抜けるマリオン

高級マンションの広告を見るのが好きだ。

高級マンションの広告では、その物件が如何に魅力的か?そして憧れの対象になるべきものかを語り、そしてそれをあなた自身の手で所有することができるという喜びについて語られる。自分はマンションを買うつもりもないので「冷やかし」で見るのだが、その煽り文句に対してどのように向き合えばいいかわからなくなるような、撫でられたことのないところを撫でられたような言いようのない恥ずかしさを感じてしまうのである。

先日、近所を歩いていると建設中のマンションがあるのを見つけたので、早速公式HPをチェックしてみた。実物は現在グレーの布に覆われてクレーンが伸びている建設真っ只なので、どのようなマンションが出来上がるかわからない。その全貌を知りたいと思ってマンションHPの「デザイン」のページを見てみることにした。

リコット岡崎城「デザイン」

岡崎の中心街の喧騒からほんの少しだけ距離をおいたこの場所は、 意外にも低層の住宅街。

周辺から独立峰のように建ち誇るこのマンションのデザインコンセプトは「誇り」。

バルコニー側には門型を形作り、中央部にはキーストーンをあしらった スラブのデザインを配して安定感を表現しています。

また上層部にはパラペットよりも高く突き抜けるマリオンを設けて、 高さを強調するとともに街のスカイラインに変化を与えるデザインとしています。

共用バルコニー側にもマリオンを配して、垂直方向のラインを増やすことにより、 より高さを強調するデザインとしています。 ここへ帰る「誇り」を感じ取っていただきたい。

そんな想いを込めて、細部の質感に至るまでを丁寧に追求しています。(HPより引用)

おおおおお。3文目あたりからうっすら置いていかれ始めるが、そのあとに続く

また上層部にはパラペットよりも高く突き抜けるマリオンを設けて、 高さを強調するとともに街のスカイラインに変化を与えるデザインとしています。

おおおおおパラペットよりも高く突き抜けるマリオンわからん。「パラペット」も「マリオン」もわからんのに、すげえ堂々と書かれていて清々しい。「パラペット」と「マリオン」何?

僕の狭い知識で勝手に言うのはどうかと思うが、多分だが、大抵の人は「パラペット」も「マリオン」も知らない。だけどあまり深く考えずに読めば、

「パラペット」よりも「マリオン」が高く突き抜けている!、ということは...なんか凄そうだ!

と何となく思うだろう。そのカッコいい響きだけが深く心に届くのだ。

この感じが、好き...。

一体どんなつもりで書いたんだ、という想像が尽きない。

ちなみに調べてみたところ、「パラペット」というのは、「家屋・建物の平らな屋上やバルコニー等の外周部に設置された低い手すりのような部位のこと」を指すらしい(こちらを参考にさせていただきました)。そして「マリオン」は「カーテンウォールの縦桟部材」というのが良く見る説明だ(wikipedia:方立(mullion))。まあ縦材ということか。つまり、屋上外周部の手すりっぽいところを突き抜ける縦材。

そうやって調べてから、もう一度HPに載っている挿絵を見ると、なるほど確かに屋上に縦材が突き抜けている。これが「マリオン」か...と感動した。学びである。

かくして、「マリオン」という概念を手に入れた僕は、この日から散歩をするにつけて、街にマンションがあるのを見つけては「マリオン」を探し、「マリオン」を認識できる人間としての新たな人生を歩み出したのであった(パラペットはそこまでお気に入りではなかった)。

めでたしめでたし。



余談だが、やはりマンション広告については大山氏による「マンションポエム」の分析が素晴らしいのでこれを紹介しないで終わるわけにはいかない。是非読んでいただきたい。

それでは。


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