2018年9月23日日曜日

第2回『大型書店の本棚全部見る』

8月18日に『大型書店の本棚全部見る』企画の第2回を開催した。

過去の記事はこちら
第0回『大型書店の本棚全部見る』
第1回『大型書店の本棚全部見る』

第1回終了の段階で書店全体のうちのどこまでを見ることができたのか、振り返ってみよう。前回の記事で書き忘れていたが、MARUZEN&ジュンク堂書店梅田店の各フロアの構成は以下のようになっている。

7F 児童 学参 語学
6F 洋書 理工 医学
5F 芸術 人文
4F コンピュータ 社会
3F 地図 実用
2F 文庫 新書 文芸
1F 新刊・話題書 雑誌
B1F コミック

前回は7階を制覇して6階の理工を半分程度回ったところで終了したのであった。さて第2回。前回と同じメンバー4人。今回は我々はどこまで進むことができたのだろうか。

第2回『大型書店の本棚全部見る』レビュー



理工(続き)


理工もまだ半分残っているのである。脳科学から始まり、農業、生物、食品などなど。

ここではそのあたりはバッサリカットして、秀和システムから出ている『図解入門よくわかる最新水処理技術の基本と仕組み』という本を買ったことについて書こう。

かねてから水については「実験室にある水冷用の水のフィルターがすぐ汚れる」とか「コーヒーを淹れるのに水道水直接だと不味いので浄水ポットでろ過した水を使う」など、水についてはスルーできない関係で付き合っている。そんな中、上記の本が目に入ったのでここぞとばかりに購入した。早速読んでみると、そういった生活用水のための上水道での処理について書いてあるのはもちろん、水質の定量化や排水処理など広く水処理についての技術が解説されている。そして、この本を買ったことで以下のような喜びがあった。

今回、同じく理工のコーナーで『暗渠マニアック!』という暗渠(”あんきょ”と読みます)についての本に出会っていた。暗渠というのは地下を通る川や水路のこと。暗渠なあ、などと言っていると、4人のうちの1人であるK君が「百万遍の下にも太田川という暗渠がある」ということを教えてくれた。ググってこのひとのページを見て学ぶ。解説の途中に何やら水路の分類らしい「合流式」という単語が出てくるのだが、「合流式」が何なのかの解説は無いのでその場ではスルーした。しかし、『図解入門よくわかる最新水処理技術の基本と仕組み』にはちゃんと合流式について書いてあるのである。うれしい!全然違うモチベ―ションで買った本にちょうど欲しかった情報があるタイムリー感!

そしてさらに、下水処理に関しては「膜分離活性汚泥法」が載っていた。これは以前ヌートンの『地味な「ろ過装置」もオモチャのCMみたいに紹介したら欲しくなるのか?』で扱われた技術だ。膜分離なんて今後一切見ることがないと思っていたので、旧友との再会くらいうれしい!

結局ここで言いたいことは、みんなも水処理についての本を買おうな!ということではなくて、このようにして何かと気になったら手を出しておくと、かつては頭の中で無関係だったモノ同士がバチバチつながるんやで、ということである。この快楽は、物語の伏線を回収したときの快楽のようでもあり、進研ゼミの漫画の「これ進研ゼミでやったやつだ!」の快楽でもある。

えーっと「理工」コーナーの感想は…、理工系でなにか気になることがあったら今後も秀和システムの入門書を当たってみることにしよう。



医学


普段ほとんど足を踏み入れないコーナーだ。

まず出会ったのが介護や医療福祉のコーナー。とりわけ介護というと、かつて自分の身の回りでも介護する人とされる人がいたこともあり、その様子と深刻さをリアルに感じる。印象的だったのが『はじめて学ぶ介護の日本語 基本のことば』などの、外国人介護士のための日本語の教科書だ。そうか、そういう本も出てるんだよな。超高齢化社会において、介護というものがどうなっていて、今後どうなるのだろう。そういう社会問題としての介護については「社会」のコーナーにあるかもしれない。『介護のストレスマネジメント』といった、介護するものの負担についての本も多くあった。

医療コーナーで興味深かったのは、医療の技術的な部分に対する専門書の他にも、医療に関して付随する行動や意思決定の方法、心的な問題についても書籍があったことだ(ストレスマネジメントのほかにも例えば『看護者が行う意思決定支援の技法30』『絵でわかる口述信念対立』など)。今のところ医療は機械がやるわけではないのであって、必ず人と人とのコミュニケーションがあるということである。

消化器、循環器などの専門的なコーナーももちろん見る。昔ドラマの『医龍』を見ていたせいで「推し臓器」が心臓なので、カテーテルアブレーションの教科書や、弁形成術の手順を詳細に解説した本『心臓弁形成手術書 スペシャリストのコツ,技とキレ』を見るなどした。

こういった書籍を見ると、この方法に至るまでの過程と歴史を想像してしまう。医学という学問が積み上げてきた叡智というのは本当に恐ろしいくらい偉大だ。ここにある本を書くにあたって、大量の病気や死を前にして得た知見を世界中で共有し、少しずつ前に進んできたのだろう。物理だって、得た知見を世界中で共有して少しずつ前に進んできたのかもしれないが重みが違う。その知見を得るために払った犠牲の重み。以前『心臓の科学史 -古代の「発見」から現代の最新医療まで-』を読んだ時も同じような気分になった。医療に対する敬意はんぱないよ。

ちなみにだが、『長生きしたければ○○しなさい!』みたいな本は「医学」のコーナーには置いていない。「実用」あたりで出会うのだろうか。

洋書


洋書コーナーでは雑誌と普通の本があったが、どちらも基本的に落ち着いていてスタイリッシュだ。いや、スタイリッシュなものだけオシャレチョイスで輸入しているのかもしれないが。英語ネイティブではないので、本棚をざっと見れば興味がある本が目に飛び込んでくる、ということにはならない。ゆっくり歩いたものの、結局はもとから興味がある方向の本ばっかりを手に取っていた。以前ドイツの書店をブラブラしていた時に買おうとして買わなかった本が置いてあった。『The aircraft book』というめっちゃかっこいい飛行機の本。アウトレットコーナーで安く売っていたので買おうかと思ったが、ぎりぎり乗り気にならず買わなかった。機が熟したら買おう。

洋書のコーナーでは既に夜になっており疲れていたのであまりテンションが上がらなかった。それを反映して感想でもテンションが低い。しゃあない。


さいごに


結局第2回は、6階の途中から始まって6階を全て見終わって終了(全然進んでない!)。今回は前回よりも2時間多い9時間もいたのに…。

この2回は、やや「理系」寄りのコーナーが続いたわけだが、次回は「人文」と「芸術」。「人文」では歴史の棚と出会うはずである。いや正直言うと、実は昔から歴史は苦手なんだよね。現代から遡って20世紀くらいまでならまだしも、古い日本史も世界史もあまり知らない。そんな僕が歴史のコーナーにどこまで積極的に立ち向かえるのか正直不安だ。しかしそういう場面でこそ、この企画をやる意義が発揮されるというもの。つまりこれまで興味がなくて無意識的に自分の世界の外へ追いやっていたジャンルに対して飛び込んでいき、壁を取り去ろうとするのである。どうなることやら。

そして、先日非常に嬉しい話を聞いた。このブログを読んだ方が、触発されて書店に行き本を買ったのだという。ハートウォーミング。書いた甲斐があるというものである。ブログで取り上げたそれぞれの本は、各人の背景や問題意識、興味の有無によってどう受け取るかが様々なのでオススメ本というわけではないのだが、この本屋企画自体はオススメしたいと思っている。だからこれを読んだことがきっかけで行動をしたという話を聞けたのはとても嬉しい。

暗渠について教えてくれた彼も今回の感想を書いています。
四季の記憶「好奇心の奴隷たちと企画「大型書店の全ての棚を巡る」第2回」

次回(第3回)は明日9月24日。
脚パンパンになるまで本屋に居ます。
それでは。

今回買った本

→第3回『大型書店の本棚全部見る』(1)へ続く

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