2018年8月16日木曜日

第0回『大型書店の本棚全部見る』

アホみたいなことを言うが、大型書店にはたくさんの本がある。広大な売り場に大量の本棚が並べられ、あらゆるジャンルの本が陳列されている。

しかし、大型書店に行っても見ない棚が沢山ある。興味のないジャンルの棚を横目に、目的の本がある棚を目指して歩く。横目にすら見ないかもしれない。無目的に書店に入ったときには、興味の有無に関わらずうろうろといろんなジャンルの棚を見るかもしれない。それでも、見向きもしない領域は存在する。書店が大型であればあるほど、足を止めたことのない領域は広い。

そんななか「大型書店の本棚を端から端まで全て見て回る」というのをやってみたいと、あるとき思った。どのコーナーもスルーしない。全ての棚の前で立ち止まりじっくり観察し、気になる本は手に取り、買いたければ買う。

大阪のMARUZEN&ジュンク堂書店梅田店。売り場面積日本最大(※1)のその書店は、この企画を実行するのにふさわしい、その名の通りの「大型書店」だ。2018年6月23日、大学の友人3人と共に、僕はその巨大な書店と真に向き合うことになった。


はじめのアイデア


早速、入店からの我々の様子や感じたことを順次書いていこうと思ったのだが、その前になぜこの企画をやろうと思ったのか、書いておこうと思う。というか、なぜこの企画をやるのか、ということを考え、明らかにしていく作業を経て、この企画が完成するといっても過言ではない。というわけで、次回に実際の様子を書くことにして、ここでは第0回と称して前書きを書こう。


書店で本を買うということ


現代において「本を買う」という言葉が指している行動は多様だ。ネット通販や電子書籍の利用が当たり前の世の中で、「書店に行って本を買う」ということはそれらのうちの一つの選択肢に過ぎない。

自分を例にして振り返る。まず、明確に読む本が決まっている場合と、そうではない場合では、行動が全く異なる。前者の場合、紙で読むか電子書籍で読むか、そもそも電子書籍はあるか、紙の本なら書店に行くのが早いかamazonで買うのが早いか、書店に売っているか、などを考える。ブックオフなどの古本屋に行くこともある(ここでは「書店」と言った場合古本屋ではない本屋を指すことにする)。一方、買う本が決まっていないがとにかく何か読みたいという場合には、とりあえず書店に行き、うろうろする。

これだけ書いておいてアレだが、実は欲しい本が明確に決まっている時にも結局書店で本を買う場合が多い。では、電子書籍でもネット通販でも古本屋でもなく、書店に出向いて本を買うのはなぜだろうか。単純な答えとしてはその方が楽しいからだ。目的の本を買いに行ったとしても、目的の本だけ買ってすぐ店を去るというわけではなく、必ず他の本を見るためにうろうろするわけで、その時間にこそ喜びがある。平積みの本、最近気にしている話、雑誌。気になるコーナーを見て回り、もう未練はないか?と自分自身に確認を取ってから書店を去っている。僕にとって書店で本を買うということは、こういった一連の動作を指している。

偉そうに書いたが、なにも特別なことはないだろう。多くの人が書店であてもなくうろうろしていると推測している。多分、何か新しい世界とつながっていると期待して足を運んでいるのではないだろうか。

書店のアイデンティティとは何か


amazonなどの他の方法と比べれば明らかだが、うろうろできることこそが書店のアイデンティティである。品揃えでamazonに勝つことはできないが、amazonであらゆる本を自由に手にとって見て回ることはできない。もちろんamazonだって、各ジャンルのお勧めの本として自動的に選ばれて表示される本以外にも、手を伸ばせばいろいろなジャンルの本を見ることができる。しかし、やはり目立つのは話題書、ベストセラー、履歴から計算された興味がありそうな本で、その先の、全くこれまで気にしさえしていなかった本と出会うことの難しさを感じる。

しかし一方で、書店に行って本を購入する人たちも、気になるところだけうろうろしていては、元々の興味の重力圏から抜け出すことができない。全く気にもしていないジャンルと出会うには、全く気にもしていないジャンルの棚へ足を運ばないといけないのだが、そんな世界があることも知らないとき、そんな発想も出てこない。

あらゆる本を自由に手に取って見ることができるということ、そしてそれを通じて新しい出会いがあるということ、これを書店のアイデンティティだとするならば、その性質を活かす極限を取ればどうなるか。その自然な答えとして、できるだけ品揃えの良い大型書店に行って片っ端から本棚を全部見る、という企画が浮かび上がってくる。こう言うと、それほど素っ頓狂なアイデアでもないという気がしてこないだろうか。


さいごに


以上が、この企画をしようと思うに至った基本的なアイデアである。ツッコみどころは色々あるかもしれないが、それは追い追い考えていこう。実験家はアイデアがあればとりあえずやってみて、やりながら考える、ということをよく言われたりする。実際第1回を終えた我々は、この企画の意義についてことあるごとに喧々諤々の議論をしている。

最後に、第0回とか第1回とか言ってるけどどんだけ続きがあるの?と思われるかもしれない。そう思われた方は続きを読んでいただきたい。我々は知の泥沼に足を踏み入れてしまったのである...。

第1回『大型書店の本棚全部見る』へ続く

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※1
売り場面積2062坪で日本最大とのこと。
大型書店の売り場面積についてはこちらを参考にしました。
少し古いのでランキング詳細の最新状況は各自ご確認下さい。

公式HPの店舗情報にも「ジュンク堂書店池袋本店を凌ぎ、国内最大の売場面積と蔵書数を誇る大型書店」との記載があります。


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