2018年5月19日土曜日

学部生に研究のことを話す

昨日は、京大物理の研究室が皆さん一斉に研究室紹介・オープンラボをする「ローレンツ祭」というイベントがあった。院入学を考えたり考えなかったりしている学部生に対して、各研究室が並行してそれぞれの研究内容を紹介しており、スライドやポスターを使って説明したりデモ実験をしたりして、各々の物理の魅力を伝える。夜には、大きな会場にて立食の交歓会が行われ、そこでも研究内容を紹介したポスターボードを前に物理の話をして盛り上がる。

うちの研究室では、日中のオープンラボの際はボスが主に研究内容の説明をする。実験室見学の時は学生も説明したりするが、僕は大抵無関係なので、学部生の相手をするわけではなく居室に引っ込んでいたり普通の実験を進めていたりしている。その代わりというわけではないのだが、夜の交歓会では例年ポスターの前に立って学部生の相手をする。

これが楽しいのである。

冷却原子の研究の発展をさらって「こういうステップの積み重ねで今こんなことが出来るようになっていて、こんな物理を対象にしているんだよ」という語りをしたり、「こういう装置を組み合わせてこんな感じで観測するんだよ」、という写真を見せたり、量子力学をまだやってない人に対して「重ね合わせって言って1つの原子がこっちにもこっちにもいるんだよ」みたいなことを順を追って説明したりする。聞いている側は極端なリアクションこそしないが、それでも面白みが伝わったと感じる瞬間が分かるときがある。「へぇー」と声が出たり、若干目が見開いたり、背筋が伸びたりする。その瞬間を見るにつけ「それ!その気持ちを大切にしろ!」と心の中で思ったりする。

何かを説明して、それに対してリアクションが得られるというのは一般に楽しいイベントである。自分が取り組んでいることについてだと特にそうだ。普段の同業者同士の議論では込み入った話をした上で「そこはおかしくないか?」などガチの議論になるのに対して、学部生に対する研究紹介では魅力を伝えることに重きを置き、新鮮な驚きのリアクションが得られる。その興奮をきっかけにして研究の道を進み、成長してまたローレンツ祭に来た学部生に魅力を伝える。これはある種のラブアンドピースサイクルである。

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