「マインドコントロール」とは、人の思考や感情に影響を及ぼすことにより、思い通りに行動を支配することである。支配者の巧妙な手口によって心を動かされ、気がつけば操り人形となって金銭的・身体的な搾取が行われる。こういったことが怪しい宗教団体や霊感商法などにおいて行われてきた。
大学生になってから宗教団体への勧誘に遭遇した、という経験があるかもしれない。そういった意味では、その危険は身近なものだと考えていいかもしれない。また、研究室などの閉じた社会での生活で、いつの間にか思考や行動が束縛されてしまう、ということがあるとすれば、これもある種の緩いマインドコントロールかもしれない。
こういったマインドコントロールに興味を持つきっかけになったのは、紅白歌合戦で無事ゴジラを倒したX JAPANボーカルのToshl氏が、12年もの間、自己啓発セミナー団体のマインドコントロール下にあり、金銭的・身体的搾取を受けていた、ということを知ったことである。世の中的には当時結構大きく取り上げられていたのかもしれないが、僕はX JAPAN世代でもなく、昨年の終わりごろになってそういったことを知って、どういったことが行われていたのか気になった。
例によって、いくつか本を読んでみたので、ここにまとめておくことにする。遠・中・近と、違った距離感でマインドコントロールをとらえる感じで。
全体像をつかむ 遠景
岡田 尊司
文藝春秋
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この本には、マインドコントロールの原理、歴史的な背景、心理学的側面がかなり詳細に記されている。
マインドコントロールをする側、される側の傾向の分析、それら背景にある心理が丁寧に解説されており分かりやすい。また、かつて行われていた暗示療法や諜報機関によるマインドコントロールの運用なども、現在のマインドコントロールに至るまでの発展として詳細に取り上げており、この部分だけでも面白い。マインドコントロールの行動原理、その応用、解き方に至るまで、具体的な例も含めて幅広い内容となっており、その全体像をつかむ事が出来るだろう。
これを読む限り、マインドコントロールの手法は、長年の研究により、かなりしっかりと分析され、確立されているようだ。思考と行動がいつの間にか思い通りに操られる、というのはかなり恐ろしいものがあるが、それが「こうすれば操ることができるよ」と本にまとまっているというのもまた恐ろしい。
より身近な問題として 中景
紀藤正樹
アスコム
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目的、方法、程度、結果などを見て、それらが「法規範」や「社会規範」から大きく逸脱している場合は、これを「マインド・コントロール」と判断して問題視すべきである。(P.55より)として、社会問題としてのマインドコントロールについて論じている。実際、日本における具体的なカルト集団や霊感商法と、その実態・被害について取り上げている。1冊目(岡田氏の本)の「全体像」と比べ、この本ではより「身近にある危険」として掘り下げている。後半では、脱マインドコントロールの手法や、被害を減らすための提言も記されている。弁護士の視点はやはり精神科医の視点と異なるもので、そう言った意味でもこちらを見てみるのもいいかもしれない。
ただし中古でしか売ってないので注意。Amazonで中古で買った。
実際のケースを詳しく 近景
Toshl氏はX JAPANとして活動中にある女性と知り合い、その女性を通じて自己啓発セミナーに参加。その後、実に12年にわたってその団体によるマインドコントロール下に置かれ、多額の金銭的な搾取に加え、罵倒、暴力による虐待を受けていた。この本には、その壮絶な経験が生々しくつづられている。実際に受けた被害に加えて、自身の考え方が徐々に変わっていく様子を追っていくのはかなり辛いものがあった。インパクトのある本だ。
実際には、この本を読んだ後により詳しくマインドコントロールに関することを知りたいと思い、上の新書2冊を読んだ。すると、Toshl氏の受けた被害、洗脳の手口が、まるっきり上の2冊に書かれている手順通りではないか。言い方がよくないかもしれないが、マインドコントロールの具体例として、この上なく詳細にそのステップを追いかけることができる、という点でおすすめできる。
さいごに
コントロールする側の手法・手口を知ることが、被害に遭わないための防衛策のひとつだろう。また、実際に自分が被害に遭うというかどうかというところまでいかなくても、人間の脳の脆弱さを知るという点でも興味深いトピックだと思う。
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