2015年7月18日土曜日

「量子制御技術の発展により拓かれる量子情報の新時代」に参加したよ!(1)


今週月曜から4日間にわたり開かれていた基研研究会「量子制御技術の発展により拓かれる量子情報の新時代」が昨日閉幕した。

量子情報と関わりのある様々な分野の学生・研究者が集まった、量子情報関係の結構大規模な研究会だ。
量子情報の研究と言っても本当に様々で、量子計算の理論の方や、デバイス作ってる方、物性屋さんで量子情報ゴーグルを装備した方など、書き切れないほど多種多様な研究をされている方々が集まっていたと思う。
というか、全ての方が、量子情報とそれぞれの関わり方をしていて、それらのオーバーラップを見つけ、意見を交換し合い、刺激し合うために開かれた、フェス的なイベントと言っていいかもしれない。

今第一線で活躍する研究者の他にも、学生が大勢参加していたのも印象的だった(学部生もいた、というか誘った)。



「量子情報の新時代」は、昨年3月に開かれた「量子情報の新展開」が前身になっていて、僕はちょうど学部の卒業研究を発表できる場として、ポスター発表で参加したのだった。
量子情報という分野(?)の発展と広がり、技術の本気さを感じたり、ポスター発表というものの面白さを体感した。
その時もブログに感想を書いてて(しかもその時は毎日更新していたようだ!)、読み返すと当時の記憶が呼び起こされて面白い。

というわけで、かいつまみながら、今回も感想を書き留めておこうと思う。
(ここまでが前置きであることからわかるように、またしても短くは無い。)
(1日目からいくつかの講演に対するとても個人的な感想を書こうかと思っているので、読んでて退屈になる場合は後編(2)の最後のほうに飛ぼう!)





1日目。

理論、実験のチュートリアル講演からスタート。
基本演算の話からDeutsch-Jozsaのアルゴリズムを丁寧にさらい、量子計算のモデルの確認をした。
2日目以降にも、SPT相の話でlocalなゲート操作を用いた定義が出てきたりしたので、意義深かったと思う。
実験チュートリアルでは、量子状態を制御して量子計算を行うためのロードマップとして”量子計算の階層構造”を確認した。

お昼からは、超伝導量子ビット・光・イオンを使った量子状態操作についての講演が続いた。
特に、古澤さんの講演を聞くのは初めてで、よくそんなことができるなと感銘を受けた。
数々の研究成果に感銘を受けたというのはもちろんだが、一応僕も(ほとんどの日は触らないが)多少は光学系を扱う人なので、あの恐ろしい数のオプティクスをアライメントしていると思うと感銘を受けざるを得ない。最近はチップ型のデバイスの開発も進んでいるようだ。

夜には懇親会があって、学部の学科の先輩に久しぶりにお会いしてLOCCの研究について話したりした。
もう少し見ず知らずの人と絡めば良かったとも思った。


2日目

朝から押川さんの講演。
SPT相の話。トポロジカル相については全く知識が無かったのだが、量子ゲートを用いた定義っぽいものを与えて、さらにAKLT状態とその量子計算への応用などを丁寧に解説して頂いた結果、少し分かった気がする!
有限の「ふんわり分かった感」が得られるのは大事なことだ。

で、2日目で一番聞きたかった、相川さんの冷却エルビウムの話。
少し量子情報からは外れるような気がする冷却原子系であるが、光格子系を使った量子シミュレーションは古典計算機でシミュレートできない規模の量子多体系の振る舞いを明らかにしてくれる立派な”計算機”なわけで、今回の研究会では冷却原子系について結構多くの講演が入っていた。
ちゃんとした長さの冷却原子系の講演が聞けるのは割と貴重だと思う。
特に相川さんの研究は、エルビウムという原子の双極子相互作用に関する研究で、僕はイッテルビウムの双極子相互作用による効果を捉えようとしている人間なので、とても気になるわけだ。
相川さんの研究では、とても見事に様々な角度から双極子相互作用の効果を見ていて、これはうちでも見えるかもしれない、というものもたくさんあった。ありがたや。


2日目にはポスターセッションがあった。
今回もポスター発表者として参加。
基本的には物理学会で話した内容で、さらに進展があった部分を追加し、まとめた。
今回発表した内容は、上で書いたような双極子相互作用を使った話の方ではなくて、実は量子シミュレーションでもなくて、量子情報っぽさがあまりない話なのだが、「量子ゼノ効果」についてってことでなんとかよろしくお願いしますって感じで。


まずは段下さんに説明。
段下さんには何度か自分の研究について話して議論をさせてもらっていることもあり、ポスターの時間には真っ先に来ていただいた。
散逸のある系の相転移ってやっぱり取り扱いが難しくて、それでもなんとか信号をひっかけようといろいろアドバイスを頂いた。
その後も、冷却原子や光格子系について詳しい方、興味を持って下さった方、ふらっと立ち寄った方に、ある程度まとまっている・まだまとまってない部分も含めてお話をすることができた。
結局、あっという間に4時間半ほどが過ぎ、お開きになった。

このポスター発表の魅力は、なんといっても時間制限が無いことで、前回は学部生のひよっことし
て多くの方に色々突っ込まれた結果17時から21時まで議論していた。
今回は17時から21時40分まで議論することができた。いろんな方に色々な意見をもらった。
特に、情報熱力学の観点から相転移ってどうこう言えないですかねって話が出て、これは落ち着いて考えると面白いだろうと感じた。

その日は結構多くの方が夜まで盛り上がっていて、お開きの後、さらに皆さんでラーメンを食べに行って、量子コンピューターが・量子情報が今後どうなるかとか、量子力学の勉強の入り口がどうあるべきかとか、いろいろな話をして(主に白熱する2人の議論を横で聞いていたのだが)その時間もとても有意義だった。



後編(2)に続く。


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