2019年3月24日日曜日

第6回『大型書店の本棚全部見る』

『大型書店の本棚全部見る』企画、通称『本屋企画』も年を跨いで2019年に突入した。D論提出組の提出・審査も無事終了し、2019年1月26日、いよいよ第6回を開催。今回のターゲットは3階、「地図」と「実用」だ。

前回(第5回)の記事はこちら
→第5回『大型書店の本棚全部見る』(1)
→第5回『大型書店の本棚全部見る』(2)

第5回までの進捗はこちら。第6回にして、ようやく半分を過ぎて後半戦に突入である。

7F 児童 学参 語学
6F 洋書 理工 医学
5F 芸術 人文
4F 社会 コンピュータ
~~~~↑ここまで見た↑~~~~
3F 地図 実用
2F 文庫 新書 文芸
1F 新刊・話題書 雑誌
B1F コミック

「実用」には、スポーツとか料理とか美容とか、我々の日々の生活に直結するジャンルが含まれている。また、囲碁将棋、パズル、刺繍や編み物など、趣味に関するジャンルもある。まずは「実用」を振り返ってみよう。

普段何気なく触れている身の回りのモノ、技術の粋を集め過ぎ

鉄道コーナーに来た。鉄道の構造を詳細に説明した「改訂版・電車基礎講座」など、技術系の本が沢山ある。在来線も新幹線も全部スゴい。以前、京都の鉄道博物館に行ったことがあるのだが、そこで見たような内容がしこたま本になっており「それ鉄道博物館で見た」と言いまくった。副読本として何冊か技術系の本を買ってから鉄道博物館に行くのもまた楽しいだろう。

改訂版・電車基礎講座
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こういった解説を読むと、普段何気なく利用しているモノが技術の粋であることに、しみじみと感動する。今回は鉄道の他にも、車や飛行機などの乗り物コーナーを見たが、全て技術の粋なのだ。振り返れば、この企画でこれまで見てきたトイレも建物も医療機器も全部そうである。そしてそれらが技術の粋であることを認識する機会を失うくらい安定して稼働しており運用されているので、そんなことには気付かないでいるのかもしれない。こういうの読むとさあ、心から基礎研究大事って言えそう。そんな話をした。

腹減ってるときの料理本、刺激強い

「実用」のメイントピックは何といっても「食」である。グルメ本や料理本はもちろん、コーヒーやお酒などの飲み物、おつまみ本も展開されている。まいどまいど朝早くから集合して書店へ向かっている我々にとって、午前中というのは空腹とともに本を物色する時間帯なのだが、そんな中でも昼食前の最も空腹な時間帯に料理本のコーナーに突入してしまった。それはそれは魅力的なこと。写真の本当に綺麗に撮られてること。食べ物というものが如何に視覚に訴えかけてくるか。ページをめくる度に「あぁ~」とか「はぁ~」とか「あかんわ……」などと発声し、言語化に失敗し続ける。人間の欲求にダイレクトに向かってくるため脳による高度な処理が不可能。そしてとにかくお腹が空く。思えば、人間は食べ物を食べ続けてきたのであり、その魅力を伝える工夫もまた異常に発展しているのは当然なのだ。読者皆様も、11時30分ごろに大型書店の料理本コーナーに行ってみて、どれだけ空腹にアタックしてくるのか体験してほしい。

また、料理の要素や素材1つ1つに特化した専門性の高い本が並んでいる。たれ、ソース、ドレッシング、スパイス、出汁。僕はあまり手の込んだ料理はしないので、料理の世界の広がりと奥深さに圧倒され続けた。

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守備範囲の棚がやってくると引き出しが開く

実用コーナーはジャンルの種類が多いので、4人で歩いていると、それぞれが強く興味を持っているジャンルに次々と出会う。そして、そのジャンルについては知識があったり情報収集したりして、守備範囲として各々しっかりと守備をしていることに驚く。簡単な説明をしてくれたり、興味を引く情報を提供してくれるので楽しい。4人とも学業的な専門は物理学だが、それ以外にも勝手に専門分野のようなものを形成しているのである。このフロアだと、僕の守備範囲は飛行機、100均、防災、照明、透明なもの、純喫茶。それに加えて興味があるのが女性ファッション、住宅。本屋企画も6回目になると、それぞれが何を守備範囲としているかをお互いが了承しており、「ほら、○○あるで」と、これはお前の守備範囲の本ではないのか?という旨のやりとりをする。これがまた面白く、互いの隠れた引き出しを開けることができるかどうか試してみたりするのである。


さらに、もともと守備範囲であるジャンル以外にも、歩けば歩くほど「あ、これ」と引き寄せられる棚が登場する。全く触れたことの無いジャンルを前に立ち止まることもある一方で、実は前々から気になっていたんだよな、ということを思い出すことも多い。例えば今回は人形の雑誌を買ってしまった。うーん本屋に見透かされているようだ。大型書店に行って、浴びるように様々なジャンルの情報を得ることで、逆に自分自身の潜在的な趣味趣向が浮かび上がるというわけである(「実用」コーナーに来て特に感じた)。その意味では、大型書店は自分自身を映す「鏡」のようである。

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気になることを物質化する

こんな調子で、実用コーナーは普段と違って次々と新しいジャンルと向き合うテンポの速い回だった。日頃から我々は、いろんなことが気になっていたということ。そしてそれが、本を購入するという形で物質化されたということ。そういうことを感じた1日であった。帰り際に、そんな会話をした。

~2019年1月27日00時04分ごろ、梅田駅周辺にて~
(録音した会話を書き起こしたもの。話者:高三、トミタ、imaro)

高三「ほんまにでもこうなんか日頃、日頃気になってることっていっぱいあってさあ、それがさあ、やっぱ結晶化するっていうことですよね」
トミタ「結晶化した。もうね、物質化してる」
高「そう!物質になるんだよ!この重さに!いまこの、俺の腕を煩わすこの重さに代わる。そして本棚のスペースを圧迫する!」
ト「そうやな。うん、物質化してる」
高「そう。物質化するって大事やなって思うよな。やっぱ消えないから」
imaro「あー、物質化する、な」
高「そう」
ima「ええこと言うてる」
高「ええこと言うてる?録ってる?」
ト「録ってる」
**一部聞き取れず**
高「……それ最近ずっと思ってて。ホンマに人間の思考って儚いもので」
ト「そうやな……」
高「なんか、ああええわ、とか、良さみが深いとか言うたところでさ、消えんねん。良さみも何もかも。だけど、本にしたらそれは残るし、もし良さみが自分の中で消えても、その本と改めて遭遇することで、そのまた良さみが復活したり、逆に場合によっては新しい良さみが生まれることもある」
ト「そう。置いといてな」
高「そう。そん時見ると」
ト「もう一回モチベーションの波が来るから」
高「また違った良さみがね、出てきて、もうなんかよりどんどん思考が先へ行けるねん。そういう意味で物質っていう一個足場を作ることが、人類のその、僕らの思考を発展させるのにどんだけ大事かっていうことをこう、痛感するんすよ」
ト「はい。ええこと言うてます」

物質化された日頃気になること(4人分)

今回の購入品

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