2019年1月14日月曜日

『ミラクル エッシャー展』

あべのハルカスで開かれている『ミラクル エッシャー展』に行ってきた。3連休も最後となる今日は、展覧会の最終日ということもあり人が大勢いたが、なんとか閉会1時間前に会場に入ることができた。

実は小学生の頃にエッシャーの展覧会に行ったことがあり、どうせ似たような感じでしょ、と今回のエッシャー展はスルーする気でいた。しかし、あれから十数年経ったということもあり、新たな気持ちで観てみようという気持ちがじわじわと湧いてきて、今日の昼間に思い立って家を飛び出し、ギリのギリで滑り込んだという次第である。

結果として、その判断は間違っていなかった。非常に面白かった。小学生の自分にとってもエッシャーの不思議な絵というのはワクワクさせられるものだが、ド理系の大学院生になって観るエッシャーというのも、また独特の刺激を与えるものである。「これはテンソルネットワーク的なやつだな」とか「タイルの充填はこういう条件があれば可能だが、この絵の場合は…」といったことを考える。これからは「昔観たからいい」といった気取った態度は捨てようと思った。

具体的に面白かったと感じたところを書いておく。

まず印象的だったのが、エッシャーのいわゆる「騙し絵」的なスタイルの背景に、そのルーツとなるような様々な過去の作品の蓄積がある、ということが分かる展示になっていたこと。山や街、建物などの風景であるとか、天地創造にまつわる作品など、幅広いテーマの作品が展示されていた。そしてその中で登場する、表面での反射とか連なる建物といった要素が収束して、馴染みのある騙し絵に現れてくる。そういった流れを追いかけることができる、良い流れの展示だった。

また、作品を構成する細やかな技術を見ることができたのも、面白ポイントだった。エッシャーの作品は、ミクロに見るとその多くが直線的なラインで構成されている。また、木版やリトグラフなどの印刷的な作品が多いことから、色は白黒の2色のみで、その中間色が無いものが多い。にも関わらず、岩の表面や海の波紋、空間のゆがみを見事に描いている。これはどういうことだろう、と思ってよく観察すると、それぞれの線の太さが微妙に異なっていたり、複数の直線の端をたどると曲線になっていたり、そういった微妙な技術が見て取れる。これがマクロに引いてみると、ソリッドかつ豊かな描写を生んでいる。こういった技巧が、エッシャーの絵をエッシャーの絵たらしめているのだろう、と感心した。

ここ最近はあまり展覧会に行く頻度が高くなかったが、やはりいいものだなと感じた。


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